AP-MALDIイメージング質量分析を用いた腎臓におけるアセトアミノフェンとその代謝物の識別分布の検出と新規代謝物質の同定
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AP-MALDIイメージング質量分析を用いた腎臓におけるアセトアミノフェンとその代謝物の識別分布の検出と新規代謝物質の同定

要旨

組織内における薬物分布研究は、薬物の薬物動態や潜在的な毒性を理解する上で極めて重要である。

近年、マトリックス支援レーザー脱離イオン化-質量分析イメージング(MALDI-MSI)は、高感度、ラベルフリー、親薬物、代謝物、内因性分子を区別できることから、薬物分布研究において注目を集めている。

これらの利点にもかかわらず、薬物イメージングにおいて高い空間分解能を達成することは困難である。重要なことは、多くの薬物や代謝物はイオン化効率が悪いため、従来の真空MALDI-MSIではほとんど検出できないということである。

アセトアミノフェン(APAP)とその主要代謝物の1つであるAPAP-システイン(APAP-CYS)は、誘導体化なしでは真空MALDI-MSIで検出できないことが報告されている。そこで我々は、誘導体化せずに大気圧MALDIイメージング質量顕微鏡を用いて、腎臓におけるAPAPとAPAP-CYSの分布を高空間分解能(25μmと10μm)で示した。

APAPは薬物投与1時間後に腎盂に高度に蓄積し、APAP-CYSは投与30分後および1時間後の両方で外髄質および腎盂に特徴的な分布を示した。興味深いことに、APAPとAPAP-CYSのクラスター様分布が10μmの空間分解能で腎盂に観察された。

さらに、MSIとタンデムMSIを組み合わせることにより、APAP-ブチル硫酸(APAP-BS)と仮称される新規のAPAP代謝物が腎臓、脳、肝臓で同定された。

本研究により初めて、APAP、APAP-CYS(腎臓)およびAPAP-BS(腎臓、脳および肝臓)の分布の差異が明らかになり、この薬剤の薬物動態および潜在的な腎毒性の理解が深まると考えられる。

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