抗酸菌(Mycobacterium)は、人類の長い歴史の中で克服すべき最大級の感染症病原体として恐れられてきました。世界の結核感染者数は推計で1,000万人を超え、年間死者数は依然として100万人を超える水準にあります。
さらに近年、日本を含めた先進国では、非結核性抗酸菌(NTM)症が高齢化や慢性呼吸器疾患患者の増加とともに顕在化し、感染症診療や公衆衛生に新たな課題を突き付けています。
この抗酸菌に立ち向かうために必要なのが、迅速かつ正確な診断、そして分子レベルでの詳細な解析です。
プレッパーズは、浜松医科大学で蓄積してきた医療知見と質量分析技術を土台に、抗酸菌解析の研究や開発を支えるお手伝いをしています。
抗酸菌は細胞壁に独自のミコール酸を多量に含み、脂質リッチな特殊な構造を持つため、通常のグラム染色では染まりにくい性質があります。
そのため診断は、
といった複数工程を経る必要があり、確定診断までに非常に時間がかかるのが現状です。
しかし、結核菌をはじめとした抗酸菌感染症では、早期診断・早期治療開始が患者予後に大きく関わります。
MALDI-TOF MSによるタンパク質指紋解析(一般的な技術解説)
MALDI-TOF MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析)は、細菌や真菌の迅速同定技術として世界的に広く普及しつつあります。抗酸菌の同定では、培養コロニーから抽出した全菌タンパクのm/zパターン(指紋スペクトル) を解析し、結核菌とNTMの識別や種レベルでの推定が可能とされています。この技術は、これまで数週間を要していた同定工程を大幅に短縮し得る手段として注目されています。
(※本技術は一般的な解説であり、プレッパーズの提供サービスではありません)
高分解能質量分析(HR-MS)によるミコール酸プロファイリング
抗酸菌は細胞壁に長鎖脂肪酸(ミコール酸)を豊富に持つため、これをターゲットとした解析が重要です。
プレッパーズでは、高分解能MS(Orbitrap・TOF)を用いて、
を行い、菌種・株ごとのミコール酸組成パターンをクラスタリングします。
これにより、
といった研究を支援できます。
LC-MS/MSを活用した耐性機序・代謝物モニタリング
結核菌やNTMでは薬剤耐性化が問題となりつつあります。
質量分析は、
の検出にも有効で、新しい耐性マーカーの探索や薬剤スクリーニングが可能です。
創薬研究でも大きな武器となります。
浜松医科大学発の医療工学系ベンチャーとして、
を強みとしています。
主なサポート例
分析内容 活用シーン
ミコール酸・糖脂質HR-MS解析 分子疫学、耐性調査
LC-MS/MSによる代謝物プロファイル 創薬・新規薬剤スクリーニング
測定メソッド共同開発 大学・製薬企業とのプロジェクト
抗酸菌診療や公衆衛生対応、さらに抗酸菌を標的とした創薬研究は、これからの医療においてますます重要性を増していきます。
プレッパーズは「質量分析を通じて微生物の見えない世界を可視化し、次の一手を導く」存在であり続けます。