いま、薬づくりの現場が大きく変わろうとしています。
かつて「経験」と「試行錯誤」に頼っていた創薬のプロセスは、分子レベルでの解析技術により、**「設計」と「証明」に基づく科学的アプローチ」**へと進化しています。その中核を担っているのが、**質量分析法(Mass Spectrometry:MS)**です。
浜松医科大学発ベンチャーとして質量分析の専門技術に特化するプレッパーズは、薬学分野への応用にも力を注いでいます。本コラムでは、質量分析が薬学にどのような価値をもたらしているのかをご紹介します。
質量分析法とは、物質をイオン化し、その** m/z (mはイオンの質量を統一原子質量単位で割った値、zは電荷数)**を高精度で測定する技術です。分子質量の特定だけでなく、構造解析、不純物の検出、薬物代謝の追跡など、さまざまな応用が可能です。
薬学ではとくに以下のようなシーンで活躍しています:
· ✔ 創薬候補化合物のスクリーニング
· ✔ 薬物動態(ADME)の解析
· ✔ 生体試料中の薬物や代謝物の高感度定量
· ✔ 原薬・製剤の品質管理と安定性試験
· ✔ 微量不純物・異物の検出
膨大な化合物ライブラリの中から活性の高い候補を選び出すには、スピードと精度を両立する分析法が必要です。質量分析は、構造情報や極微量の分析が可能なため、スクリーニングの効率を飛躍的に向上させます。
質量分析は、薬が体内でどのように吸収・分布・代謝・排泄されるのか(ADME)を可視化するツールとしても有効です。LC-MS/MSによる血中濃度モニタリングや、代謝物の構造解析は、安全性・有効性の評価に直結します。
製剤中の微量成分の変化や不純物は、患者の安全性に直結する重要な要素です。質量分析の高感度・高分解能は、目に見えないレベルの異常をいち早く検出・特定することが可能です。
私たちプレッパーズは、浜松医科大学で生まれた医療志向のベンチャー企業です。基礎研究の知見と、臨床に根ざした現場感覚を融合させた質量分析技術で、薬学・医療の課題にアプローチしています。
プレッパーズの強み:
· 医薬品・医療素材に適した受託分析・技術支援
· 臨床検体やバイオ医薬の微量成分にも対応するノウハウ
· 学術機関との共同研究・共同開発の実績
· 小ロット・探索段階からのカスタム対応
· 質量分析イメージング(MSI)に関する高い技術力
特に、創薬初期の微量解析や、製薬ベンチャー・大学研究室との連携に強みがあります。プレッパーズの顧問である浜松医科大学の瀬藤光利教授は、MSIのパイオニアであり、プレッパーズにも瀬藤教授の技術力が受け継がれています。LC-MS/MSによる血中の薬物濃度測定、所謂バイオアナリシスはADME解析の代表例ですが、近年はドラッグディスカバリーの観点からMSIが薬学の分野で重要視されてきています。投与した薬物やその代謝物が実際にどの臓器に運ばれているのか、狙った臓器に届いているのか、をMSIによって視覚的に知る事が出来ます。
質量分析は、単なる測定技術ではありません。分子の挙動を「見える化」し、薬のあり方そのものを変える力を持ったツールです。
これからの薬学は、より安全に、より効率的に、そして個別化医療に向けて進化していきます。その進化を支える基盤として、質量分析は不可欠な存在であり、私たちプレッパーズはその最前線に立ち続けます。